少女漫画から腐女子になる過程を考えてみる

よく腐女子批判している男オタクが

腐女子は自分がモテないから女キャラに嫉妬して排除しようとする。

 それで男しかいない世界じゃないと安心できないからBLに走るんだ」

と言ってるのを見かける。

 

確かにヒロイン叩きの多さを見てると、この意見もちょっと分かる。

ただ私が今までに出会った腐女子を思い返してみると、この「自分がモテないから

女キャラに嫉妬して腐女子になる」って説はあんまり当てはまらないような

気がするのだ。原因と結果が逆というか。

 

それで、主にうちの娘(21歳腐女子)の子供時代を思い返しつつ

腐女子腐女子になる過程をよくよく考えてみようと思う。

 

 

 

三大少女漫画誌という分かれ道

 00年代当時はまだ「三大少女漫画誌」という概念がギリ存在していた。

この「りぼん、ちゃお、なかよし」という3誌は、男子にとっての

「ジャンプ、サンデー、マガジン」とは根本的に違った意味を持っていると思う。

つまり女オタクの最初の分かれ道なのだ。

 

娘が生まれたのが1999年。

80年代ならいざ知らず、うちの娘ですら「なかよし派とりぼん派は趣味が合わない」

と言うのだ。そして「花とゆめ・LaLaに行ったらオタク確定」と。

  

私の独断でこの「分かれ道」を図にすると、こうだ。

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 この緑が私で、ピンクが娘だ。

もうちょっと詳しく書くと私はりぼん→ぶ~け→ジャンプ→アフタヌーン

娘はなかよし→ジャンプ→Gファンタジー系→二次創作へ、と移動した。

 

  娘が言うには、なかよしはオタク度が高くそのまま腐女子になる読者が多いと。

うちの娘にとってなかよしは、心の奥では少女漫画に根本的に向いてない女が

それを自覚するまでの仮の場所であって、もっと向いてるジャンルに行くための

中継地点のようなものらしい。

うちの娘にとっては。

 

私が中高生の頃のなかよしは、そこまでオタク寄りじゃなかった気がするけど

LaLaや花とゆめがオタク寄りなのは変わらないらしい。

20年前、私の周囲の腐女子

花とゆめに流れたらだいたいがヤオラーか同人女になる」と言っていた。

 

ちなみにちゃおは最もコロコロやジャンプと親和性が高く、純粋にエンタメとして

漫画を読んでいる健全な漫画愛好者のための読み物である、と娘は考えているらしい。

 

オタクに目覚めるタイミングはかなり早い

つまり、腐女子は腐趣味より先にオタクに目覚めるわけだ。

私の印象だと、小学校の中学年くらいですでにオタクと非オタは分化が始まる。

そして腐女子が出現してくるのがだいたい高学年から中学校あたりだ。

 

 そこから推測するに、オタクかどうかは生まれつきだと思う。

オタク傾向は中学年あたりから出てくるから、小さい頃は近所だとか

同じ幼稚園だったとかでつるんでた子供たちが、趣味で繋がるようになる。

で、腐女子とか夢女子とかいったカップリングでの分岐をし始めるのは

第二次性徴以後、思春期だ。その前から腐女子だったという人はまだ見たことがない。

 

図にするとこう。

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そして腐女子や夢女子になる女ってのは9割がたオタクなのであって、

オタク気質に性的な何かが影響すると腐とか夢とかいった分岐が起きるんじゃないか

と私は推測している。

 

(オタク=アニメやゲーム好きくらいの意味で使ってます)

 

 

女オタクは妄想との距離が近い

ところでnoteやブログの女オタクの自己紹介や思い出話を読んでると

「私は空想癖のある子だった」「好きな漫画やゲームで何時間も妄想した」

「授業中や一人の時もずっとアニメの世界に行っていた」という回想が多い。

 

ここから二次創作を知ってハマり、腐・夢・男女CPと分岐していくわけだ。

そう考えるとなかよしや花とゆめがオタクに好まれやすいというのは多分

ファンタジー色が強く空想しやすいせいだろうと思う。

 

こういう空想は幼児が一番得意で、アンパンマンや戦隊、プリキュアになりきったり

まるでキャラクターが見えてるかのように会話しながら遊んでいる事もよくある。

私もウルトラの母になりきって家中の人形をヒーリングした覚えがある。

 

これに対してりぼん系の少女漫画ってのはキャラも舞台も現実に近くて

空想してもあまり面白みがない。

子供もサザエさんちびまる子ちゃんではなりきり遊びをしないけど

考えてみたら現実の子供の生活に最も近い設定だ。

そう言えばうちの娘も小さい頃に「イクラちゃん嫌い」「まる子嫌い」

「(しまじろうの)はなちゃん嫌い」とよく言った。

なんかこう現実に刺さってくるものがあるんだろうと思う。

 

この「現実に刺さってくる感じ」がより減るのがファンタジーであって、

それが腐向け二次創作とか夢小説となるとさらに減るに違いない。

なんせヒロインにイライラするという少女漫画最大の問題が解消されているから。

  

非オタは漫画を読んで「こんな恋愛がしたい」「このヒロインみたいになりたい」

あるいは「○○君みたいな人と付き合いたい」と思う。

しかし女オタクは「この世界に住みたい」「この世界のヒロインになりたい」

「○○君と付き合いたい」と思う。この差。

  

子供はナチュラルに二次創作をする

前にもちょっと書いたけど、オタク趣味は幼児との共通点が多い。

オタクがキモいと言われる理由は幼児との共通点が多いから

 

考えてみると二次創作も小学生がよくやっていて、自分で考えたオリポケだの

オリキュアが活躍する漫画をノートに描いたり、好きな漫画を模写したり

そっくりのオリキャラ作ってストーリー考えた人は多いと思う。

うちの娘も小3の頃、よくポケモンがわいわいしてるだけの漫画を描いていた。

 

大学の美術教育学でこういう話を聞いた。

幼児は、幼児画という独特の手法で絵を描く。それは写実的な「絵」というよりは

頭の中を図式化した「説明」に近い。それが中学年くらいになると幼児画を卒業し、

しかし写実的に描く力もない谷間に入る。この時期の子供はひたすら模写をする。

つまり既存の絵柄やキャラをマネながら自分の世界に取り込もうとするわけだ。

うちの娘がポケモン漫画を描いてた時期はまさにここに該当する。

 

うちの娘は、オリジナル漫画が描けないらしい。

考えてみると娘の同人活動って小3で描いてたポケモン漫画から始まっている。

ただ内容が腐向けになったけど。

 

何が言いたいかというと、二次創作って実は子供にとっては創作の基本形であって

オリジナルの方がその後のステージになるってことだ。

だから「なんでわざわざ二次創作するの?」というのは愚問なのだ。

しかもネットでは二次創作の方が閲覧も稼げるからメリットも大きい。

 

・・・なんか二次創作してる人を敵に回すようなこと書いてる気がするが

趣味って童心に帰ってやるものだと思うので基本的に間違ってはいないと思う。

(法的なことは置いといて。)

ただ、童心に帰ってまで恋愛妄想するというのが独特だと思う。

 

「壁」を超えられるヒロインを求めて

 ところで子供向けのアニメを見てると気付くことがあって、

女の子キャラが大きく2パターン出てくる。

 

しまじろうには正統ヒロイン系のみみりんとボーイッシュなにゃっきい

(旧らむりん)が出てくるし、

ハム太郎にも同様にリボンちゃんとじゃじゃハムちゃんがいる。

 

プリキュアも主人公はピンク固定で元気ヒロイン、脇がボーイッシュやクール系に

なっている。

 

私や娘の子供時代を思い返してみても、こういうバリエーションは

非常に理に適っていて、女児の大半は第一選択肢としてピンクキャラを好むが

だんだん成長とともにこのヒロイン然としたピンク女子に物足りなさとか自主性のなさ

あるいはダサさ、子供っぽさを感じ別のキャラにスライドしていく。

他にもマフラーちゃんやバタ子さん、たまちゃん的なお母さん味の強いキャラ、

セーラーヴィーナスやおんぷちゃんのような高スペックキャラもいる。

つまり女児の発達段階や好みごとに受け皿が用意されてるわけだ。

 

何が言いたいかというと、女子はかなり初期からヒロイン像を追って放浪してるのだ。

しかし三大少女漫画誌のあたりで決定的な壁にぶち当たる層が一定数出てくる。

どのヒロインにも共感できない、ヒロインがいる時点で空想を阻害される、

と感じるタイプが夢や腐に流れるんじゃなかろうか。

 

私が少女漫画を卒業したのも、結局は恋愛ものが多いしヒロインに共感できない

という理由で、青年誌などのバトルやデスゲームの方が話が面白かった。

ただ私の場合は恋愛もの自体に飽きたから、青年誌から恋愛妄想はしない。

 

腐女子や夢女子は、恋愛ものを卒業してもなおジャンプなどを題材にして

恋愛妄想を続けてる人々なので、やはり恋愛への関心は高いんだろう。

 

 そして二次創作する女オタクがぶち当たるヒロインの壁というのは

嫉妬とか嫌悪というよりは、空想に浸りがちで「自分」の置き場所を

ただの読者ではなく作品世界に持ち込まざるを得ない性質から来てるのでは。

だからこそ「壁視点」なんて不思議な表現が生まれるんじゃなかろうか。

 

 

 

・・・なんか全体的に10年以上前の古い話になってしまった。

今は少女漫画はかなり衰退して、ゲームアプリやウェブコミックSNSから

オタクや二次創作に触れる人が多くなっているから、腐女子の入り口も現代では

いたるところにあるだろう。

 

あと「商業BL好きはどこに含まれるんだろう」とずっと考えてたけど、

正直よく分からない。

最近だとタイドラマからBLにハマったという人が多いけど、

見てると私が感じてるような腐女子特有の生態を持ってない。

いつか腐女子とか夢女子とかいった概念自体が崩壊していくかもしれない。