※昔ヤフーブログに書いた記事を推敲・移動しています
よく「オタクというだけでバカにされる時代は終わった」とか
「最近のオタクはキモくない」とか「未だに偏見を持ってるのは年寄りだけ」
という意見を見かける。
正直まったくそう思えないので、それについて書いとく。
「オタク」の意味が変わった
何より、80年代と今では「オタク」の意味が変わった。
ためしに、うちの娘に「オタクってどういう意味?」と聞くと
迷わずこう言った。
えー
アニメとか漫画とかゲームが好きな人のことでしょ?
ほらやっぱり。
説明しにくいので図解してみる。
80年代、原初の「おたく」「
オタッキー」は世間のごくわずかの、
見るからにキモかったり浮いてる人を指す用語であって
けしてアニメファンや鉄道マニア全体を指す用語ではなかった。
つまり「おたくさぁ…」と言ってくるような独特のアレな人々を
マニアの間で「おたく」と呼ぶようになった。これが原初のおたく。
それがだんだんメディアでネタにされるうちに、
ああいう(チェックシャツにケミカル
ジーンズ、リュックとか
体型や髪形がだらしない、口調やしぐさが気持ち悪い)人々をおたくと
呼ぶ風潮が出来上がった。これが80年代のおたく。
「おたく」と「マニア」の最大の違いは、
「何の」という接頭語が必須かどうかだ。
つまりマニアは何のマニアなのか指定しないと意味をなさないが
おたくは「おたく」だけで成立する。
しかし「何のおたくなのか?」を知っている人は少ない。
正直、私も知らない。
こういう風に、”おたく趣味”の有無にかかわらず
外見や社会性に独特のアレがあれば「おたく」認定できる、
それが80年代の「おたく」なのだ。
そこから90年代、00年代にかけて「おたく」の範囲が広がっていく。
で、今はこう。
今ではオタク=アニメ、アイドル、鉄道などが好きな人。
あるいは、何かひとつの事に没頭しているとか、詳しい人。
つまり、外見のキモさや社会性の欠如という条件が無くなった。
更に「料理オタク」「コスメオタク」など、いわゆる”オタク趣味”ではない
ものにまで使われるようになり、蔑称でも自虐でもなくなってきた。
つまり、
今はオタクが市民権を得たのではなく、
もともと市民権のあった層までオタクと呼ぶようになっただけなのだ。
紛らわしいので呼び方を変えてみる
今でも(特に年寄りは)昔ながらの意味で「オタク」という単語を使っている。
紛らわしいので、この日記の中ではひらがなとカタカナで使い分けてみよう。
おたく=80年代に使われた、見るからにアレな人々を指す蔑称。(図の紫ゾーン)
オタク=今使われる、オタク趣味のある人々の総称。(図の水色ゾーン)
もちろん世間でこういう使い分けがされてるわけではない。
オタク趣味とは何なのか
ところで「オタク趣味」って何なんだろう。
いや、言うまでもないような気もするけど。
アニメ。漫画。ゲーム。コスプレ。鉄道。声優。アイドル。プラモ。特撮。
だいたいこのへんか。
ミリタリー、パソコン、カメラ、SFやファンタ
ジーの小説は微妙かもしれない。
それにしても、今の若い人は「オタク趣味」をどう定義しているんだろう?
昔は単純で、まず最初におたくという人種が定義され、
そのおたくが好みがちなものが「おたく趣味」と呼ばれたわけだ。
アニメと鉄道なんてファン層はぜんぜん違うけど、それぞれから滲み出る
アレな感じが似てるから一緒くたに「おたく趣味」とされたわけだ。
しかし今の若いオタクは「最近のオタクはキモくない」などと言いながら
今でもアニメと鉄道をどっちも「オタク趣味」とカテゴライズしている。
そこにどういう共通点を見出しているんだろうか。
結局今も昔も同じでは?
ちょっと気になって大学生の娘に聞いてみた。
「オタクっぽいってどういう意味で使うの?」と
すると「イモ臭いって意味でしょ?」と。
ほほう・・・
娘の意見をまとめると、こうだ。
- オタクとは、漫画アニメゲームといったオタク趣味を持つ人をさす。
- オタク趣味とは、漫画アニメゲームetcである。
- オタクっぽいとは、イモ臭いという意味である。
うーん…まず上の2つで堂々巡りしていて、それへの回答として
「イモ臭い」という基準が提示されてるわけだけど
これってつまり80年代とほとんど変わってないんじゃないの?
「キモい」から「イモ臭い」に薄まっただけで。
「
星野源ってオタクなんだって!全然そう見えないよね~。
やっぱり今は普通に勝ち組のオタクもたくさんいるんだよね~。」
こういう事を平気で言う。
この発言は「オタクはキモい」という前提が無きゃ出てこないだろ。
オタク趣味とキモさの関係
私は個人的に、オタク趣味が世間からキモがられるのは当然だと思っている。
そしてオタク趣味の共通点は「幼児性」だと思っている。
それに当のオタクだってさんざん鉄オタや萌えオタ、
腐女子をキモいと
叩いてきたはずだ。非オタは尚更だろう。
だから私は、オタクもオタク趣味も市民権を得る日は来ないと思う。
オタクのハードルが上がってきた
ここ数年、更に変わってきたと思う事がある。
例えばYahoo!知恵袋のこの質問。 >「アニメオタク」と言うのはアニメについてディープな所まで
>知識をもって愛している人
まじかよ!!じゃあ私オタクじゃないわ!
まぁ知恵袋が世間の総意だとは全く思わないけど、
うちの娘も「オタクは称号みたいなもの」と言う。
例えば自己紹介で「アニメオタクです」とは言いたくない。
なぜなら私はそこまでアニメに詳しくないから。
「それにニワカほどオタクですって言うし。
自分でハードル上げるのと同時にニワカ臭も出るから損しかない。」
なるほど。
40代の私からすると「それはただのマニアでは?」と思うけど。
オタク=学者肌 という誤解
最近じゃ茂木健がオタクをやたら持ち上げたり
「若者よオタクであれ」みたいな論調も増えてきた。
言ってるのはたいがい部外者で、オタクの内実をよく分かってない文化人だ。
有名人がオタクを自称することが増えたのも理由の一つだと思う。
その場合はたいがい自嘲や謙遜で、
「こう見えて実は」「遊んでる、派手な生活してると思うだろうけど」という意味だ。
そんな時に限って「映画オタク」「家電オタク」「コスメオタク」
など、オタクでもなんでもない趣味を披露する。
要は「自己満足」「凝り性」という漠然としたイメージで
「○○オタク」ということばを使う人が増えてきた。
「オタク」が「○○オタク」になったとたんにやたらポジティブなニュアンスを
出してくるというこの現象が私にはよく分からない。
実際のオタクは、何も生み出さずにひたすらグッズや知識を蓄え
それをひけらかし合っているだけの非生産的な人々も山のようにいるのであって
けしてみんながみんな生産的だったり探究心に溢れているわけではない。
「オタク」という単語にそんなクリエイティブな意味は無かったはずだ。
こうなってくるともうオタクが何を意味してるのか分からないが、
そんな現代でさえ「じゃあ鉄オタもドルオタも探究心旺盛でクリエイティブだから
モテるんじゃないか」とはならない。こんなのは詭弁なのだ。